Italy / Lombardia
Ca ' del Conte カデルコンテ
· PIBIBUM 2018
品種 ピノ· ビアンコ
白微発泡 750ml
スティルワインとして醸されていたピノ・ビアンコから誕生したワイン。醸造工程中でうまく発酵しきらず、どうしようかと考えたパオロは、収穫時冷凍保存していたシャルドネのモストを加えて瓶内二次発酵を行いました。その試みは成功し、カ・デル・コンテ初のスパークリングワインが誕生しました。おそらく数十日マセラシオンしていると思います。So2無添加。偶然が生んだ良作です。
爽やか!クリスピーな酵母の香り、奥の方に熟れた南国フルーツ系、アンズ、ライチ、マンゴーがほんのりと香ります。
果実の濃さが明らかに強くなり旨味たっぷりでギュンギュンと口に広がります。澱を絡めればより味わいはまとまり集中していきます。
抜栓後の状態も不安定さがなく全く心配ありません。(インポーター資料より)
Ca ' del Conte / PIBIBUM 2018
ロンバルディア州パドヴァ県オルトレポーに属する町「ボゲイラ」で2003年に設立、2012年に元詰めを開始した小さな生産者です。前当主「パオロ」の両親からの遺産である畑を引き継ぎ、環境保全活動に対する強い意思を持っていた父パオロと、ガストロノミー大学で学んだ経験からナチュラルワインに興味を持った娘の「マルティーナ」2人でワイン造りを始めました。
所有する畑はワイルドで生命力に満ち溢れています。標高370mに位置し、なだらかですが角度があり日照条件にも恵まれています。畑内には葡萄以外の植物をあえて共生させています。極端に増やそうとしなければ自然な範囲内での共生は土地に良い影響を与えると考えているからです。畑の真横には手つかずの森があり、そのおかげで虫や病害などのリスクが軽減されているそうです。
一部の白ワインは長期マセラシオンを行います。このエリアの脆い石灰を含む強い粘土質土壌から生まれる濃密な果実感と果皮に漬け込むことにより生まれる骨格の強さ、そして自然酵母発酵、亜硫酸を一切使用しない限りなくナチュラルなワイン醸造から非常に力強く豊潤な白ワインを得意とします。亜硫酸に支配されないカデルコンテのワインは他のオルトレポーの生産者のワインとは明らかに一線を画す独自の魅力を持ったワインです。
栽培品種は、シャルドネ、ピノ・ネロ、リースリング、ピノグリ、ピノビアンコがあります。パオロが個人的に好きな品種である「ティモラッソ」も近年になって栽培が開始されています。エリアとしてもトルトーナに近いとはいえ、ロンバルディア州でこの品種を醸造する事はとても興味深いです。そしてピノ・ネロもまた特徴的で淡くもエキス感の強い独創的なロザートや、野性的で超熟可能なアストロ・ピノ(宇宙のピノ)というワインもカデルコンテの代名詞です。
カ・デル・コンテのワインはビジュアルも異彩を放っています。エチケットの個性的なおじさんとおばさんのキャラが印象的です。これは自分達の育てているブドウ樹をそれぞれイメージしており、樹齢を人の年齢に合わせて外見も描かれています。約50年の樹齢のブドウ達と付近を見てパオロは「僕のおばちゃん達は今日も元気だ!」とユーモラスに話していました。パオロの葡萄への愛情が表れた素敵な表現です。
このエチケットは友人でパオロの故郷クレモナのアーティストである「マルゲリータ・アッレグリ」が描いています。漫画を描いたりイラストの先生をしているとても忙しい人なので時間が取れずにラベルデザインにはけっこう時間がかかるそうですが、カデルコンテの一つ一つのワインに対するテーマを可愛らしく表現し、さらに法律上定められているラベルの表記関連も全て対応してくれる頼もしい人なのです。
このようなナチュラルなワイン造りの元々の発起人はマルティーナでした。彼女は父親譲りの探求心と行動力を持っており、VinNaturやViniveriに参加していく中でピアチェンツァのアンドレア・チェルヴィーニらと交流を深め、家族のワインもナチュラルなワインにしたい!という重いが芽生え、パオロにラディコンを飲ませたりして説得を行いました。昔ながらのコルテーゼやありきたりなピノグリージョのフリッツァンテを飲んできたパオロにとってラディコンの長いマセラシオンと自然酵母のエキス感は大きな衝撃を与えたそうです。
そういった経緯があり、パオロの畑への考えである自然との調和、未来の子供達に残せる自然環境を残そうという考えから実践する無農薬栽培への強い考えと、ラディコンやアンドレア・チェルヴィーニ達から刺激を受けたナチュラルなワイン醸造をやろう!というマルティーナとの父娘の情熱が融合してカデルコンテのワイナリーとしての道筋が決まっていったのです。実際の醸造に関しては素人だった彼女達はアポデーレ・イル・サントを去ったエウジェニオにアドバイスをもらいながらナチュラルなワインを造り始めました。
しかし非常に強いパーソナリティーを持っていたパオロ。マルティーナとお互いのワイン造りの強いこだわりと情熱が徐々に衝突していくようになりました。そして2016年頃からマルティーナはワイン造りから距離を置くようになり、彼女はボゲイラを離れてロンバルディア州の環境保全団体の職員の仕事に就きました。このころからワイン造りは基本パオロのみが行っていましたが、マルティーナは仲が悪くとも収穫の時だけは手伝っていたそうです。
30年間体育教師をしていたパオロは、とてもエルギッシュな男でした。出会った時の年齢は64歳でしたが、ケンカ別れ状態だったマルティーナ抜きでも元気に畑の仕事、醸造を兼任していました。栽培や醸造を0から学んできたパオロは昔から「無知と戦ってきた」と言いました。知らないことは恥ずべきことではないが、知ろうと思わないことは愚かだと言っていました。教師時代にはボスニア等の戦後復興支援やボランティア、発展途上国での開発支援などに参加し、イタリアという国を飛び越えて様々な人生を歩んでいきました。とにかく行動力がある人だったのだと思います。出会った当時の印象は穏やかでユーモラス、会話にたくさんのジョークが混じる陽気で自由で豪快な雰囲気な男だと思いました。ワインの味わい以外にも彼の地域の環境保全の考えの強さに心を打たれました。正義感が強く、愛情深く、この先の子供たちのことを熱く考える人でした。
娘との関係は相変わらずでしたが精力的にワイン造りを行ってきたパオロ。新しい葡萄を植えたり、2019年には畑の目の前に醸造場を完成させたり、順調にワイナリーを成長させてきました。しかしこれからやりたいことがまだまだたくさんあり、情熱が溢れている中の2021年の収穫後に病魔が彼を襲い、それからわずか1年足らず2022年7月にこの世を去りました。病床で最後の最後まで葡萄の収穫の準備の心配をしていたそうです。
父が他界したことによりワイナリーの事後作業は娘のマルティーナに全て降りかかりました。父を失ってから1ヶ月後には葡萄の収穫をしなくてはいけなかったり、ワイナリーの事務作業にも追われ、私が訪問した2023年4月までの約半年間、彼女はまともに寝ることもかなわない程に多忙な日々を送っていたそうです。人手が必要な収穫時にはカステッロディステファナーゴという生産者達も協力してくれたりと周囲のサポートに助けられましたが、結局ケンカ別れ状態のまま別れてしまった父との言葉にできない悲しみを抱えていました。
しかし悩みはしましたが一度はワイン造りへの情熱を持っていた彼女は再び自分の心に火を灯し、父からこのカデルコンテを継承する決意を固めました。
パオロは亡くなるその時まで自身が死ぬとは微塵も考えていなかったそうでしたが、マルティーナは医師から余命を知らされていたのでそれとなくパオロに事務的な質問をしてみましたが、パオロは「マルティーナ、俺は死なないからそんなこと心配いらないぞ!ガハハ!」と笑い飛ばしていたそうです。なので所有権の移行などの手続きは非常に困難でしたが、なんとか無事カデルコンテはマルティーナのワイナリーとして新たな船出ができました。
現在でもまだまだマルティーナは多忙なワイナリー仕事に追われています。しかし畑の仕立てを見直したり、パオロが醸した熟成中のワインをボトリングしたりと着実に前へ進んでいます。元々農学やナチュラルワインの醸造に興味があり学んできたのでパオロの方法からより良い方法へと変えられる部分は積極的に変えていくようです。少し雑で豪快な仕立てをしていた父親の名残を感じる樹を見ながら「見てこの樹の剪定。信じられない!お父さん本当に適当なんだから!」と目を潤ませながら空のパオロにクレームを入れていました。
ナチュラルなワインという父も愛した味わいの根本は決して帰るつもりはありません。パオロが志半ばだったリースリングのワインの醸造や、父が亡くなった後の畑の選定中に聞いていた時に名前を決めた「ソウル・シュガー」というピノ・グリージョの新しいワインは、亡き父が「ありきたり」と表現したこの品種を素晴らしくユニークで深い味わいに表現していました。マルティーナはこれからカデルコンテの新しい可能性を見出し、さらに強くなった情熱を込めたワインを私たちに届けてくれるでしょう。父譲りの強いハートを持つ彼女ならばきっと大丈夫だと信じています。
(インポーター資料より)